「都市経営研究科による『都市経営研究叢書シリーズ』プロジェクト」がはじまりました

都市経営に関する指導的人材やプロフェッショナル/実務的研究者を養成する新しい大学院として2018(平成30)年4月に開設された都市経営研究科は、新しい時代に求められる教程を想定するとともに、広く都市経営にかかわる諸科学に携わる方々や学ばれる方々に供するため、『都市経営研究叢書』シリーズの刊行を開始しました。

まちづくりイノベーション都市行政の最先端

『都市経営研究叢書シリーズ』刊行にあたって

21世紀はアジア・ラテンアメリカ・中東・アフリカの都市化と経済発展の時代であり、世界的には、人類の過半が都市に住む都市の時代が到来しています。ところが、「人口消滅都市(※注)」 などの警鐘が鳴らされているように、逆に先進国都市では、人口の減少、高齢化、グローバル化に よる産業の空洞化が同時進展し、都市における公共部門やビジネス等の活動の課題は益々複雑になっています。

なぜなら、高齢化等により医療・福祉などの公共需要は益々増大するにもかかわらず、人口減少・産業の空洞化が同時進行し、財政が緊迫するからです(※注:2014年に日本創成 会議(増田寛也座長)が提唱した概念)。このため、これからは都市の行政、ビジネス、非営利活動のあらゆる分野で、スマート(賢く)でクリエイティブ(創造的)な課題解決が求められるようになります。

人口減少と高齢化の時代には、高付加価値・コストパフォーマンスの高いまちづくりや公民連携(PPPやPFI)が不可欠です。今後重要性の高い、効果的なまちづくりや政策分析、地域再生手法を研究する必要があります。また、人口減少と高齢化の時代には、地方自治体の行政運営の仕方、ガバナンスの課題が大変重要になってきます。限られた財政下で最大の効果を上げる行政を納税者に納得して進めていくためにも、合意形成のあり方、市民参画、ガバメント(政府) からガバナンス(運営と統治)への考え方の転換、NPOなどの新しい公共、そして法や制度の設計を研究する必要があります。

また、産業の空洞化に対抗するためには、新産業の振興、産業構造の高度化が不可欠であり、特に、AIなどのICT技術の急速な進歩に対応し、都市を活性化する中小・ベンチャーの経営革新により、都市型のビジネスをおこす研究が必要です。

一方、高齢化社会の到来で、医療・社会福祉・非営利サービス需要は益々増大いたしますが、これらを限られた財政下で整備するためにも、医療・福祉のより効率的で効果的な経営や倫理を研究し、イノベーションをおこさないといけません。これらから、現代社会において、都市経営という概念、とくに、これまでの既存の概念に加え、産業や組織の革新(イノベーション)と持続可能性(サスティナビリティ)というコンセプトを重視した都市経営が必要となってきています。

このために、都市経営の基礎となるまちづくり、公共政策・産業政策・経済分析や、都市経営のための地方自治体の行政改革・ガバナンス、都市を活性化する中小ベンチャーの企業経営革新やICT化、医療・福祉の経営 革新等の都市経営の諸課題について、都市を支える行政、NPO、プランナー、ビジネス、医療・福祉活動等の主要なセクターに属する人々が、自らの現場で抱えている都市経営の諸課題を、経済・経営・政策・法/行政・地域などの視点から、都市のイノベーションとサスティナビリティをふまえて解決できるように、大阪市立大学は、指導的人材やプロフェッショナル/実務的研究者を 養成する新しい大学院として都市経営研究科を、2018(平成30)年4月に開設いたしました。その新しい時代に求められる教程を想定するとともに、広く都市経営にかかわる諸科学に携わる方々や、学ばれる方々に供するため、ここに、『都市経営研究叢書』を刊行いたします。
 


 
 

■都市経営研究叢書 第1巻

佐藤道彦(都市経営研究科教授)・佐野修久(都市経営研究科教授)編『まちづくりイノベーション ─ 公民連携・パークマネジメント・エリアマネジメント』(日本評論社刊、2019年3月刊行、第1期配本)第1部 まちづくりの新たな潮流 第1章「公民連携によるまちづくりの流れ」 第2章「新たな公民連携としてのパークマネジメント」/第2部 PPPとまちづくり 第3章「PPPの概要」 第4章「PPPの類型・事業形態」 第5章「近年重視されているPPP」 第6章「まちづくりにおけるPPP」/第3部 大阪市におけるまちづくりイノベーション  第7章「大阪市の公民連携の系譜」 第8章「大阪市のパークマネジメント」 第9章「うめきたイノベーションエコシステムとエリアマネジメントの構築」
 


 
 

■都市経営研究叢書 第2巻

久末弥生(都市経営研究科教授)編『都市行政の最先端 ─ 法学と政治学からの展望』(日本評論社刊、2019年2月刊行、第1期配本) 第1章「都市行政と住宅法」 第2章「都市行政と水法」 第3章「都市行政と自治体環境行政」 第4章「都市行政と国土安全保障」 第5章「都市行政と情報法」 第6章「都市行政とAI・ロボット活用」 第7章「都市行政と現代型訴訟」 第8章「都市行政と議員立法」 第9章「都市行政と議会改革」
 


 
 

■都市経営研究叢書 第3巻(予定)

村上憲郎(都市経営研究科教授、元グーグル米国本社副社長兼グーグル日本法人代表取締役社長、慶応大学特別招聘教授、会津大学参与、東京工業大学学長アドバイザリーボード委員)・服部桂(元米MITメディアラボ客員研究員、「ASAHIパソコン」副編集長)・近勝彦(都市経営研究科教授)・小長谷一之(都市経営研究科教授、東京大学空間情報科学研究センター客員教授)編『AI(人工知能)の衝撃 ─ ビジネス、社会・経済、雇用はどうなるのか?(仮)』(日本評論社刊、2019年中刊行予定、第1期配本)(以下予定)第部 AIとはなにか? 第1章「AI革命」 第2章「AIとテクノロジー文化論」 第3章「AIの歴史・原理とデータマイニング」 小論「AIソフト:テンソルフローの使い方」/第部.AIによるビジネス革命 第4章「AIによる第四次産業革命」 第5章「AIとビジネス革命」 第6章「AIとビッグデータ」 第7章「AIとIoT」 第8章「AIとマーケティング」 第9章「AIと教育ビジネス」 第10章「AIとフィンテック」/第部.AIの社会経済学 第11章「AI革命と社会・経済」 第12章「人類にとって望ましいAIとは」
 

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